トカゲ人間
チェコたちが座っていた洞窟の入口から、数メートル奥で、身の丈ほどに岩はせり上がっていた。
穴はそこから狭くなり、闇に消えている。
どうやら今、トカゲのものらしい甲高い鳴き声が聴こえたのは、そのずっと先のようだ。
「別に心配するこたぁねぇ。
洞窟ってやつァ、音がよく響くよう出来てるんだ。
天然のラッパなんだよ。
遥か下界の音が、ここに届いた、ってだけだぜ…」
言ってタフタは、背中にあったはずの斧を持っていた手を、下ろした。
まぁ座れ、と言って、自分も座る。
「トカゲは変温動物かな。
温度の低い高山まで登っては来ないかな。
来たとしても、動きが鈍くなってしまうかな」
チェコは、あれ、と呟き、
「でもトカゲ人間は世界中を旅してるよね?」
ウェンウェイは笑い。
「トカゲ人間は体温があるかな。
見た目、近いように見えるが全然別の生き物かな。
乳は、食事としては取るが、赤子に飲ますものではないのかな」
ぬ、とタフタは、
「トカゲ人間にオッパイがあんのか?」
と無骨に聞いた。
「無いかな、無いかな。
だが旅団には羊や山羊、牛馬、様々連れて行くかな。
乳は、良い水分であり、またチーズ等にもするかな。
トカゲ人間の作った、色々な乳を混ぜたチーズは、とてもこくがあって旨いかな」
「あー、あれは美味しいのよねぇ」
とキャサリーンは同調した。
「へー、キャサリーンねぇちゃんも、旅団に会ったこと、あるんだ?」
チェコが問うと、
「ええ。
この仕事、結構、あちこちに行くものなのよ。
旅団の旅は楽しかったわ。
トカゲ人間って、温厚な人が多いのよねぇ」




