草原
「やったー!」
チェコは飛び上がって喜んだ。
「し・わ・あ・せー♡」
チェコは召喚カードにキスをし、あ、汚れちゃう!、と慌てて拭いた。
「いやー。
それにしても、巨人のエキスを予めエンチャントにして貼っておける、なんて知らなかったよ!」
「エンチャント化のスペルは、あまりバトルでは使わないから、スペルランカーは知らないことも多いのよね。
予め貼っておくよりは、いつでも好きなように使える瞬間魔法の方が使い勝手もいいし」
と、キャサリーン。
「そうだよねー。
敵がカードを持っているか、どうか、試しにアタックしてみたり、が駆け引きだもんねー。
それにエンチャント破壊スペルで壊されちゃうし…」
「まぁ、エンチャント破壊スペルを使わせるために、わざと目障りなのを貼っておいても、いいのかもしれないけどねぇ、長期戦になったら」
あ、そうか、とチェコは、少し考え込んでいたが、背後で、ガシャン! と大きな音が響いた。
数百メートル後方で、馬車が大破していた。
「あーらら。
この辺は、岩石もどきが多いから、変なコースを取ると危ないのに。
良く知らないで草原に入るなんて、無謀な人たちだなぁ!」
チェコは、救いに行こうとするが、キャサリーンは止めた。
「ほら、あたし、追われてるでしょ?
人に見られたくないのよ。
あの人達には悪いけど、草原に入ったのは自己責任だから、自分たちでどうにかしてもらえないかしら…」
うーん、とチェコは迷っていたが、キャサリーンが、ピッ、とスペルカード、巨人化をチェコの手に置くと、
「まぁ、よく知らない道に入り込む自分たちが悪いんだもんねー」
チェコは、笑って、馬車を発進させた。
背後では、盛大な爆発音に続いて、タッカーの悲鳴が草原に響き渡った。




