雨
空は、怒れる生物のように、ゴロゴロと唸り続けていた。
バチッ、とチェコの頬に大粒の雨が、痛いほどの勢いで当たった。
それでスイッチが入ったように、どぅ、と大地を滝のような雨が殴り落ちてきた。
「雹が混じっているようだな。
すぐ、気温が下がって来るぞ!」
タフタは叫んだ。
急勾配を、チェコたちは駆け上がった。
ごっ、
すぐ近くの地面に、稲妻が落ちた。
闇に一瞬、青白い光が走る。
その後、周囲は完全に闇になった。
滝のような雨が、僅かに残っていたはずの星明かりを、吹き飛ばしているらしい。
チェコはただ、タフタの背中だけを見て走っていた。
キキキキキキキキ…。
キリキリが鳴いている。
この雨と稲妻を喜んでいるようだ。
バチッ、とチェコの頭に、石のような雹が当たる。
痛いが、そんなものより、ずっと恐ろしいものが落ちて来るので、必死で走る。
ガッ、
と一瞬、周りが白々と見え、
すぐに、ドゥ、と横一メートルの所にあった岩石が、砕け散った。
「うわぁ、岩、割っちまったよ!」
チェコは叫んだ。
「とにかく走れ、もう少しだ!」
とタフタ。
「しまったわ…」
とキャサリーン。
「少し荷物、持って貰えばよかった…」
「俺、持つよ!」
とチェコは言うが、
「駄目だ!
ロープで体を繋いでいるんだからな。
お前が今更、後ろに回る、って訳にはいかないんだ!」
タフタの言葉を嘲笑うかのように、
キキキキキキキキ…、
とキリキリは哭いた。




