キリキリ
干しトマト…!
「顔が小さくなっちゃったの?」
「ああ。
これぐらいにな…」
とタフタは、手の拳を握って見せた。
闇の中、それはチェコの妄想の力も相まってか、本当に小さく縮んでしまった人の首のように見えた。
ぞ…、とチェコは黙り込んだ。
と、ゴゴゴゴゴ…。
空からの音が、チェコの恐怖に割り込んできた。
天空は、もう、いつ稲妻が起こってもおかしくない様子だった。
「あの、タフタさん?
鬼の岩屋って、まだなのかしら?」
キャサリーンもさすがに空を見上げながら問いかけた。
そろそろ、頭上の星は暗雲に飲み込まれようとしていた。
「ああ、洞窟はあの…」
前方を指さす。
イヌワシ峠へ登っていく、きつい傾斜の先に幾つか剥き出しの岩が見えるが、その一つをどうやら指している様子だ。
「あの、地面から岩が突き出している付け根に亀裂があるんだ。
そこが鬼の岩屋だ。
まぁ、急げば後三十分ってところかな。
雨が来なきゃあ、それぐらいで辿り着くはずだ」
「雨は、まだ先だよね」
チェコは空を見上げるが、ウェンウェイが、
「いや。
山の雨は平地とは違うかな。
この空だと、もう、いつ落ちてきてもおかしくないかな…」
ま、そういうこった、とタフタが言い、チェコたちは、なお一層、足を速めた。
小走りと言っていいチェコたちの背中に、
キキキキキキキキ…。
と、もの悲しい鳴き声が聞こえてきた。
「うーん、キリキリが鳴きやがったか…」
タフタの呟きに、チェコは、キリキリって? と問うた。
「何かはハッキリとは判らねぇ。
だが高山で、こういう天気の夜、鳴き声が聞こえてくることがあるんだ…。
そういう時は、かなり不吉だと、古老が言っていたな…」




