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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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寒い夜

風が、チェコたちを横殴りに走り抜けていく。


パトスが飛ばされそうになり、チェコの足首に噛み付いて、耐えた。

チェコは突然噛まれたので、ギッ、と唸り、パトスを自分の服のシャツの中に入れた。


「あっ、やっぱパトスは温ったかいや」


「チェコ、体、冷えてる…」


「うーん、少し、汗かいたからなぁ…」


しかし、どうやら雷や雹も降るという。

今は、急ぐ以外、仕方なかった。


タフタはチェコを見て、


「ロープで繋いだ方が安全か?」


チェコは、ん、と考えるが、その体に、どぅ、と風がぶつかっていく。


「僅かな時間で、風が強くなってるわね。

ロープを使いましょう、怪我をする前に」


キャサリーンも、かなり真面目な声で言った。


タフタのロープに、チェコ、ウェンウェイ、キャサリーンの順で繋がっていく。


一行の背後では、あっという間にドス黒い雲が、西の空を覆っていた。


「これは荒れるぞ。

鬼の岩屋は後少しだ。

雨が降ると歩きづらくなって、より時間も食う。

急ぐぞ!」


タフタは怒鳴るように言った。


全員、無言で従う。

もはや時間との勝負だった。


チェコは、服こそ貰ったものの、雨の備えなどまるでない。

着ている服は、ミカにしては地味だが、デザイン製を重視したブティックのオートクチュールだった。

黒のパンツスーツで、ヒラヒラしている割りに風は遮らない。

濡れたら酷いことになりそうだった。


「あー俺、革の上着が懐かしいよ…」


元々のチェコの上着は、隣家のグレンのお下がりで、立派な革のハーフコートだった。

少々転げても体を守るし、雨も風も通さない。


「俺が温める。

我慢しろ…」


確かにパトスは、いつものように温かかった。


雪が降るような冬の晩は、薄い布団の中、チェコとパトスは、いつも互いに重なって、暖をとって、寝た。

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