コカトリス
タフタは上空を睨み付けた。
「まじぃぞ、この何の隠れる場所の無い野原では、俺たちは逃れる術がねぇ!」
「え、でも二つ頭で…」
チェコは言うが、
「馬鹿か。
一度や二度、攻撃を逃れた所で、逃げも隠れも出来ないんじゃあ、カードが尽きて終わりじゃねーか!」
チェコは、ええっ! と驚いて、
「そ、それじゃあ雷で…」
「アホか、お前、ドゥーガの速さを知ってんじゃねーのか?
急降下してくる奴らのスピードは、どんな弓矢より速いんだぞ。
スペルなんか当たりゃしねぇ」
そう言えば、ヒヨウもそんな事を言っていた、とチェコは思い出した。
「…穴を掘る…!」
パトスは叫ぶ、が。
「あーら、大変みたいねぇ。
仕方ないから、ちょっと手伝ってあげるわね」
キャサリーンは呑気な声を上げると。
「召喚、コカトリス!」
どん、と空気が巻き上がり、ほっそりとした長い首の、大きな鳥が現れた。
「おお、
なんか格好いい鳥だね」
チェコは喜ぶが、パトスはジャンプしてチェコの尻を噛った。
「…馬鹿…チェコ!
あれは森で会ったコカトリス…。
全てを石化する化物…!」
あっー、あの時の!
と叫ぶチェコの横で、アッハッハとキャサリーンは高笑い。
「大丈夫よパトス君。
この子は防御に特化するよう指示してあるの。
今は、襲ってくる敵だけを石化するのよ」
キャサリーンは空を見上げ、赤い髪を掻き上げた。
「ほら、ドゥーガたちも、相手が何だか判ったみたいよ」
どうやら、首の無い鳥たちは、遠ざかっていく様子だった。




