ウサギ三点セット
「ええっ、そうなの!」
チェコは、逆に喰いついた。
「俺も見たいなぁ!」
「馬鹿…!」
パトスが、チェコの太ももに噛み付いた。
「そんな物を見たら…、それこそ山に、魅入られる…。
そういう物が見えて…、それでも正しく生きるには…、エルフように子供の頃から大変な修行を積む必要がある…」
パトスに叱られているチェコを見て、タフタも微かに笑った。
「えー、俺じゃあ、年寄り過ぎてるの?」
チェコは、噛まれた腿を擦りながら、嘆いた。
「エルフの友達がいるのなら、エルフに聞いてみるんだな。
だが今は、俺たちもいるんだ。
そうゆう奴を見ちまうなんて、御免こうむるぜ」
タフタの言葉に、チェコは喜色を弾けさせ、
「あ、そうか、
ヒヨウに聞けば良いんだ!」
呑気に笑っているチェコを、危なげな目でタフタは見た。
資質は有るのだろうが、心がちょっと幼いのか…。
本当に、女王の言うような子供なのだろうか…?
当のチェコは、キャサリーンに自分の新しいデッキを見せ始めていた。
「ふーん、エルメターレの岩石と多産の女王のコンボぉ?
チェコ君、とことんウサギ好きよねぇ」
「山津波で流れちゃったデッキには、ウサギ三点セットも、ウサギの巣穴も、ウサギのチャンプもいたのになぁ…」
「あら、あんなオモチャなら、まだあるけど使う?」
キャサリーンは、担いでいる巨大な荷物からファイルを取り出した。
ウサギ三点セットとウサギの巣穴がある。
「チャンプは残念だけど、あの草原に、どうせ本人がいるんだから、またパトスに話してもらえばいいじゃない」
大喜びのチェコの前で、タフタは足を止めた。
「待て…。
あの、空を飛んでいやがるのは、まさか…」
巨大な、首の無い鳥が、しかも十匹以上、餌もないはずの高山の上空に集まっていた。




