山神様
ふん、とタフタは鼻を鳴らし、
「影ヌリなどとつるんでいると、山に魅入られてしまうぞ。
それでなくとも小僧は、金髪金眼なんだ。
闇に近い家系なんだからな」
チェコは、何か憎まれ口を返そう!と思ったが、ふと気になった。
「山に魅入られる?」
「そうだ。
山というのは、お前ら平地の村の奴らが予測なんて出来ないほど、強い霊気に満ちた場所なんだ。
こういう所では、一所作、一言葉にも注意を払わないといけない。
すぐに魔や精に取り憑かれてしまう。
人間は、そういうものは、敬い遠ざけるのが利口なやり方なんだ」
チェコは、うーん、と考え、
「で、魅入られると、どうなるの?」
タフタは、チラッとチェコを見、
「山から出られなくなり、まろうどになり、やがて消えてしまう…」
「消える?」
タフタはむっつりと、
「それ以上の事は判らん。
山には、山の掟があって、それを守っているのが一番安全、って事だ!」
星に飲み込まれたような夜の高山に、タフタのドラ声が響いた。
チェコの目線の下にまで、無数の星が光っていた。
星の明かりで、周囲は、薄ぼんやりと見渡せている。
強い風が、チェコを舐めた。
消える…、って、どこに行くのだろう…。
考えると、凄く気になった。
「ちさちゃん、判る?」
ちさは、小さな腕を組んで、んー、と考え。
「、、そういう、、山の全てを知ることは、、山神様でもない限り、、出来ないわ、、」
「山神様?」
「、、そう、、。
山神様は、、山の何処にでもいて、、探しても、、何処にもいないの、、。
出会った者は幸運とも、、不運とも言われているわ、、」
「馬鹿馬鹿しい…」
タフタが、吐き捨てるように言った。




