落ち合う約束
森は抜けたとはいえ山の中なので、ハッキリとは見えないが、確かに西の夜空の地平線に近い部分に、黒い雲が見えていた。
雲は、一面の星空を遮っているため、よく見ればそれと分かった。
「あの雲を避けて、夜に山を登っていたんだね」
「山頂付近で嵐にぶつかったら…、命にかかわる…。
だから、途中の洞窟まで…、急いでいた…」
うんうん、とチェコは頷き、
「こっちも途中までエルフのヒヨウが…、
ほら、パトスも古井戸の森で会ったでしょ。
奴はすごく親切で、俺と、それにタッカー兄ちゃんを案内してくれていたんだ」
「エルフが親切にしてくれただと…」
前を歩くタフタが、再び、ぎろり、とチェコを睨む。
「奴らが他部族に心を許す、なんてことは絶対に無いぞ、小僧」
チェコは、イラっ、としながら、
「ヒヨウは元々友達なの!
お互いに、相手をトレース仕合った仲なんだから。
タフタさんは、人を決め付け過ぎなんだよ!」
「ほぅ、トレースねぇ。
そいつは面白い、見せてくれないか」
タフタは言うが、チェコは、
「それが途中の毒マミ池で山津波があって別れたんだ。
ヒヨウはタッカー兄ちゃんを連れて、イヌワシ峠で落ち合うって約束したんだ。
俺はその時トレースのカードだけ持って裸で泳いでいるところで、服ごとスペルボックスはなくなっちゃたんだよ。
今、持っている服とスペルボックスは、一人で渓流を登った先の温泉で、ミカさんに貰ったものなんだ」
「ミカ?
チェコと戦った女?」
パトスの問いに、うん、とチェコは頷き、
「とっても親切な人なんだよ、ミカさんは」
「その子、そう言えば、チェコ君が助けた子よね」
キャサリーンの言葉に頷き、
「うん、でも、その後、プルートゥに連れて行かれちゃったんだ。
俺は、奴のパンチ一発で気絶してさ。
でも、ミカさんが、ちさちゃんを俺のために残してくれたから、鎧骸骨から抜け出る事が出来たんだよ」




