まろびとの集落
「なんで、まろびとなんかが、こんな山頂に登ってんだ?」
チェコが何か言おうとしたが、ウェンウェイは手で遮り、
「俺は、ちょっと用があって赤竜山へ向かうかな。
あっちのまろびとにも会うかな」
「えっ、まろびとって、あっちの山にもいるの?」
「山に暮らす人間の総称が、まろびとかな。
俺は理由あって一人で住んでいたが、木の細工師や、漆を集める漆師、薬草取り、山には沢山まろびとがいるし、そういう集落もあるかな。
それは、彼の方がよほど詳しいかな」
ふん、とタフタは白目がちの目を冷たく光らせ、
「知ってるさ。
ただ、あんたは、どっかから逃げてきて隠れているバスじゃ無かったのか?」
「話が変わったかな」
タフタの目が、薄く光る。
「追っ手か…」
「それは、俺たちがやっつけたから!」
チェコは言うが、
「お嬢さん、こんな厄介者を連れていたら、命が幾つあっても足りませんよ。
坊主も。
影ヌリなんかと仲良くしてると、酷い目に会うばかりだぞ。
ましてやテール兄弟なんて!」
もう、いいよ!
チェコは叫んだ。
「ウェンウェイさん、俺たちは俺たちで行こうよ!
こんな人といたって、仕方ないよ!」
チェコは、顔を怒りで真っ赤にしていた。
「待ちなさい」
とキャサリーンが言う。
「タフタさん。
もし、お約束が守れないなら、然るべき筋からお話しても構わないのよ」
「しかし…」
タフタは慌てるが…。
「私たちは、一緒に、イヌワシ峠を目指します。
もう、それは決まっていることなのよ。
タフタさんも、ご存知でしょ」




