もくじんさま
「よいか、子供よ。
ここは禁足の森なのだ。
お前とて、ここで見聞きした事を、この森の外で、何一つ語ってはいけない事は知っているだろう。
それに加えて、お前に真実を教えてやろう。
この禁足の森での約束が破られるとき、お前の村は滅ぶ。
これは、そもそも原初に村を拓いた時に交わした、絶対の約定なのだ。
だから子供よ。
お前は、大人を呼ぶことなど出来ない。
判るだろう。
そもそも今は、この森に人が入ってはいけない時。
そこに遊びに入ったのは、この幼児なのだよ。
だから子供よ。
お前は決めなくてはいけない。
この子を捨てて村に帰り、何も知らないふりをして、生をまっとうするのか、もしくは、弟を取り返すのか、をな」
えっ、と僕は驚いた。
弟を取り返す事が出来るのか? と。
藁の人形は、言った。
「できるとも。
ひどく簡単な事だよ。
お前は代価を払えばいい。
そうすれば、弟は返してやろう」
代価…。
僕は、震える声で言った。
お金なんて持って無いよ…。
しかし、口に出してから、僕は気がついた。
あ、待って!
その…。
馬を買おうと貯めていたお金が、納屋の天柱の上に貯めてあった!
たぶん千五百リンは貯まっているはずだよ!
僕は意気込んで言ったが、もくじんさまは冷酷に告げた。
「子供よ。
命の代価は、命でしか払えない。
弟の命を助けるなら、代わりに、お前の、その命を差し出すのだ。
お前は、私に魂を売るのだよ、簡単な話だろ?」
申し訳ありません。
今週は、ここまで、です。
仕事が忙しくなったので…。
日曜から再開しますので、よろしくお願いいたします。




