禁足の森
ブーフが能力を使った時に戦闘に参加できないか、或いはライフを使って魔力を行使するのか、それが判れば、もっと戦いようがあった。
チェコは、ひらひらと、陰狼の手から逃れながら、
「ハンザキに、攻撃魔法として、二つ頭!」
ハンザキは、瞬間、二体となり、陰狼の足に重なるように、喰らい付いた。
「ハンザキ二号、二つ頭!」
ぐらり、陰狼がよろけた。
ブーフは、怒りながら、大声で笑っていた。
「僕はね…。
君みたいなチビ餓鬼は、嫌いじゃ無いんだよ…。
昔、僕には弟がいてねぇ…。
そりゃあワンパクで手を焼いたものさ。
三度、木から落ちて骨を折ったし、一度など、森に一人で遊びに行って、帰って来なかったんだよ…。
村のもの皆で山を探したけど見つからなくてねぇ。
その時、僕はピンときたのさ。
弟は、祭りの時以外は、決して入ってはいけない、禁足の森に入ったんだ、ってね。
僕はランタンを持って、真夜中に山に入った。
禁足の森は、山の頂上、みまくりの神の祠から奥に入る原生林だ。
木こりも入らないから、すぐ、それと判る。
木の幹の太いこと、って言ったらないよ。
まるで、みんな、巨体な岩石みたいな樹木ばかりの森なんだ。
おーい、
と僕は、弟の名を呼んだ。
すると、ね、
おーい、
弟の声が返ってくる。
おーい、どこにいるんだ、
聞くと、
もっと奥だ…。
三ツ又の大杉の、根のウロにある扉を、必ず一回だけ、叩いてくれー、
って、聞こえたんだよ…」




