方法
磔刑の魔女が、陰狼を睨んでいた。
チェコは叫んだ。
「ハンザキ、再生!」
陰狼に、片手で握り潰されたハンザキが、再生していく。
それを見ながら、チェコはまた、叫んでいる。
「ハンザキ三号、再生!」
ハンザキは陰狼に握って潰されたため、下半身は肉片となって、下に落ちていたが…。
チェコの叫びに促されて、肉片はプクプクと盛り上がり、少しづつ再生しようとしていた。
が…。
デュエルと違い、再生するスピードは、かなり遅いようだ。
「ギャハハ!
馬鹿め、そんなトカゲの一匹や二匹で、この陰狼が止まると思っているのか?」
ブーフは、白塗りした顔を皺だらけにして、笑いこけた。
美しい金髪が、闇の中で輝いている。
「チェコ、さすがのハンザキも、奴には片手で殺されてしまうのである」
「そうだね。
でも、二匹なら、両手が塞がるでしょ。
なら、磔刑の魔女が陰狼の顔を狙える」
ケケケ、とブーフは笑い、
「やはり子供だな。
僕がいる以上、召喚獣など、いくらでも呼び出せるのだ!」
チェコは、宙に浮くブーフを見上げながら、囁いた。
「エクメル。
どうやって、陰狼を魔方陣に閉じ込めるの…」
魔石は、至って冷静に、回答した。
「陰狼を、自ら魔方陣の中に誘い込めば、自ずと魔方陣は発動するのである」
陰狼を…、誘い込む…?
チェコは、額に汗を滲ませた。
ここまで来れば自分の勝ちだと、なんとなく思い込んでいたのだ。
ブーフが見ている以上、陰狼が勝手にそんな真似をするはずは無かった。
なんとか…。
チェコは考えた。
なんとか、乱戦に持ち込んで、あまり頭の良くない陰狼が、つい、うっかり足を踏み込むように、チェコが持っていくしか、方法は無かった。




