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不意討ち
森は、静まり返っていた。
チェコはなるべく音を立てないよう、ゆっくりと森の空中を移動して行くが、これだけの木がありながら、かさ、とも音がしない。
だが、必ず殺し屋ピエロ、ブーフは、どこからかチェコを見ているはずだ。
激怒していたし、チェコは最短距離でウェンウェイに向かっているので、先回りは出来ないハズなのだ。
「主よ、用心するのだ。
敵は、アースを出すこと無く、スペルを使えるのである」
そうだ。
だから、いつ不意討ちされるか、見当もつかない。
一応、怨霊は、チェコに並んで飛んでいる。
何かあった時、いつでもサポートしてもらえる、はずだった。
「、、チェコ、、もうすぐウェンウェイさんの、、いる場所、、」
ちさが、丁寧に道案内をしてくれている。
「よし、じゃあ加速して…」
チェコが速度を上げた瞬間。
目の前に、巨大な影が現れた。
「馬鹿め!
合流などさせるか!」
ブーフは陰狼の肩に乗り、叫んだ。
チェコに向かって、陰狼の熊のように巨大な手が、振り下ろされた。




