本当の姿
「そんな!
大丈夫なの、ウェンウェイさんは?」
ちさは、ぴょん、とチェコの肩に乗った。
「痛そうだったけど、、足以外は元気なよう、、。
動けないから、、その場に魔方陣を書く、、って言っていた、、」
おお…、とチェコは感動し…、
「ちさちゃん、本当にありがとう。
よし、このまま、皆でブーフを魔方陣まで誘いだそう!」
言ってチェコは、軽快に髪を伸ばして飛んで行く。
ちさは、辺りを見回し、
「チェコ?
ブーフは、、どこ、、?」
うん…、
と頷くと、チェコは唸った。
「あいつ、さすがに悪魔に魂を売っただけの事はあるよ。
自由に空を飛ぶし、こうなると…」
チェコも、辺りに気は配るが…。
「全く、気配が判らない。
りぃん、何か感じる?」
「駄目ミタイ、生キ物ノ気配ハ、全クシナイ」
「やっぱり、生きていない、って事なのかな?」
チェコは、急に体が寒くなった気がした。
目の前で、あんなに生き生きと動いているのに、ブーフに命を感じない、とりぃん、は言うのだ。
「悪魔と魂の取引をした時点で、もはや彼は人間では無いのである」
エクメルが、重たく言った。
「じゃあ、なんなの?
オバケ?」
「魂が、、無い以上、、それはゴースト、、」
ゴースト…。
それは山野をさ迷う、妄念であった。
「え、でも、体があるんだよ?」
「念だけのゴーストと、、肉体だけのゴーストが、、ある。
鎧骸骨が、そう、、」
鎧骸骨!
それは、ゴロタの森でチェコが遭遇した、見た人の動きを封じてしまう恐ろしい怨念だった。
「で…、でも、ブーフは肌もスベスベで…」
鳥肌を立てながら、チェコは言う。
「それは、見た目だけ、、本当の姿は違う、、」
そうと聞くと、今さらブーフが恐ろしく感じてきた。
ブーフの本当の姿は、鎧骸骨と同じ…。
チェコは首を振って、怖じけを飛ばし。
「奴は、絶対、俺を追っているはずだよ。
このまま、ウェンウェイさんのところへ急ごう!」
チェコは、森の中を飛び抜けて行った。




