召喚
「ブーフ!」
チェコは驚き、叫んだ。
「陰狼がいないと、僕は無能とでも思ったか?
スペルランカーなんかより、ずっと自在に魔力が使えるんだ!」
言いながら、慌てて飛んで逃げるチェコに向かって、光球を発射した。
確かに…。
アースを浮かべずにスペルを操っていた。
チェコは、無数に伸びた髪の毛で、小さな弧を描いて、逆にブーフに接近すると、
「雷!」
と、スペルを撃ち込んだ。
金色の閃光が暗闇を走り、ブーフに命中する。
だが、当たっただけで、何も起こらなかった。
ブーフは、ギャハハ、とあざけ笑い、
「飲み込みの悪い奴だ。
そういうのは効かない、と教えただろうが!」
「くそー。
蜂蜜を被ってるから燃える、と思ったのに!」
「蜂蜜、燃エルノ?」
「そうさ。
蜂の巣も、良く燃えるんだよ」
言いながらも、チェコは次の手を考える。
だが、ブーフが叫んだ。
「飛骸骨、
疫病の粘菌、
負債の天使ガルム、
奴等を擂り潰せ!」
闇の中、鉛のように黒い天使と、羽根の生えた骸骨が、どろり、と浮き出してきた。
また、木の枝には、赤紫色の粘菌が、するすると枝を走って来る。
「くそぅ、
スペルを使ってきた!」
チェコは叫んだ。




