炎上
「クワッ!」
アヒルのような叫びを残し、チェコは燃え上がって、哀れに地面に落下していく。
「けっ…」
ブーフは、喉を鳴らした。
「子供を殺す、なんて気色の悪い事、させやがって…」
と痰を吐いた。
ブーフは、好んで魂を売った訳では無かった。
弟を助けるには、それしかなかったのだ。
子供に手を上げるような大人は嫌いだったし、まして無邪気な子供を殺すなんて趣味じゃない。
だが、主命を違える訳にはいかなかった。
どのみち、誰かを殺す、と言うことは、付随して、そいつの身近な子供たちを不幸にしている、という事に他ならない。
まぁ、どっちにしろ、僕の魂は闇の天使の玩具、なんだけどな…。
呟きながら、地面の死骸を見て、眉を潜めた。
燃え方が、やけに早い。
人が燃える臭いも無かった。
はっ、とブーフが顔を上げるのと、木の枝に髪の毛でぶら下がったチェコが、
「馬鹿ブーフ!
これでも喰らえ!」
と、叫びながら蜂の巣をぶつけるのは、同時だった。
チェコとりぃんは、身代わりの体を、松の木の枝を括って作っていたのだ。
ブーフの顔面に、大きな蜜蜂の巣が当たり、砕けた。
怒り狂った無数の蜂が、ブーフに襲いかかる。
だが…。
ブーフは、雑に蜂を、手で払った。
全くの無傷たった。
「小僧、なめた真似を!」
陰狼が吠え、チェコに掴みかかるが、しゅう、とチェコは、髪を短くして、闇に消えた。
「ひゃあ、危なかったぁ!」
と、言いながら、チェコとりぃんは、大笑いをした。
悪戯は、成功しても、失敗しても面白い。
「ブーフの奴、怒ってたね」
チェコは、アハハと、腹を抱える。
「奴ノ服、蜂ノ巣デ汚レタネ!」
ククク、とりぃん、も肩を震わせる。
「蜜蜂だらけだよ」
「ベタベタ!」
枝の上で転げるように笑うが…。
ドーン。
音が響いた。
ドーン、ドーン、とチェコたちの方に、音は迫っていた。
「うわっ、奴ったら、一本づつ木を折りながら、近づいて来るよ」
「奴ハ、ボクラノイル場所ガ、判ルラシイネ…」
チェコとりぃんは、真顔で作戦を考えた。
今年も一年、ありがとうございました。
来年も、引き続き、よろしくお願いいたします。
新年は、たぶん四日頃から再開します。
良いお年を。




