ブーフの計略
「ガハハ、
クソ餓鬼め、空中で握り潰してやる!」
ブーフは叫んだ。
が、チェコの前髪が空中へ伸び、もみの木の枝に巻き付いた。
ブンッ、とチェコは横に跳び、軽やかにもみの枝に乗った。
陰狼は空を掴み、怒り狂って、雄叫びを上げた。
「奴ガ、気ヅカナイヨウニ、ソット移動スル…」
りぃんは、面白くなってきたようで、クスクス笑いながら、作戦を囁いた。
チェコも、面白い物を見つけた。
蜂の巣だ。
バブルのスペルを発動し、蜂の巣を包むと、チェコは髪を一本だけ伸ばして、木を伝いながら、静かに横移動を続けた。
ブーフは怒りの形相で、周囲を見回すが、森は静まり返っていた。
「あの餓鬼め…」
ブーフの額を、汗が伝う。
悪い流れだ。
と、ブーフは思った。
悪い流れは、断ち切るか、やり過ごすしかない。
考えるが…。
あの餓鬼に、好きにやられたまま逃げ出すなど、宮廷ピエロにはあるまじき屈辱だった。
ブーフは闇を見回し、考えた。
奴らは、きっと近くで見ている…。
餓鬼の目的はウェンウェイの救出であり、逃げるつもりなら最初から立ち向かってなど来ない。
無論、こっちがウェンウェイの方に戻れば、追ってくるだろう。
だが…。
それでは、子供を喜ばせているようで面白くない。
宮廷で、王子の遊び相手を勤めるのであれば、わざと困って子供を喜ばせるなど、ピエロの自分には何でもない事だが、今のブーフは、殺し屋ピエロなのだ。
「さーて。
煮てやるか、焼いてやるか…」
フフッ、と笑い、ブーフは、腰に着けたスペルボックスに手をかけた。




