戦利品
「あれ、あのベスト八のお兄ちゃん、消えちゃったよ」
タッカー・トラッテーロは忽然と姿を消していた。
「おそらく、あらかじめ戦いに負けた場合、テレポのスペルが発動するように仕掛けておいたんだわ。
やはり、あいつらは用意周到ね、あのタッカーって子は、まだ駆け出しだけど、他の二人は、ちょっと別次元よ、用心してチェコ君」
チェコは、しかし他の物に注意を引き寄せられていた。
「あれぇ、何か落ちてる!」
チェコは小さな背負い袋を拾った。
パトスは臭いを嗅ぎ。
「あのスペルランカーの荷物…」
中には、スペルのファイルが入っていた。
「うわぁ、凄げー!
巨人のエキスや、草原の祈り、それにアイテム、氷結まで入ってる!」
「チェコ君、貰っちゃっていいわよ。
君が勝ったんだから」
「えー、でも、悪いよ…」
「これから君は、三人のスペルランカーと戦わなくてはならないのよ。
今の君のデッキでは、ちょっと、やっぱり役不足よ。
そのカードで、強化して頂戴」
チェコはファイルに顔を埋めながら。
「欲しいのは…とっても欲しいけど…」
「戦いに負けて逃げた相手の持ち物で、しかも相手が一方的に挑んできた戦いよ。
法的に、戦利品に間違いないわ。万事OKよ!」
公式の作法にのっとってスペルランカー同士のバトルがあった場合、合意により何かを勝敗に賭ける、ということがある。
それは当然に勝者の物と決まっているが、バトルにおいて不可抗力ではなく、相手の意思で逃げ、その場に何かが残っていた場合、戦利品とされることは、古くからのこの世界の作法であった。
「そ…そうか…戦利品なら、勝者に権利があるんだもんね」
チェコは、夢中でファイルを眺めた。
そのファイルには、十ページにわたってスペルカ-ドが収まっていた。




