魔物
「ボクハりぃん、てぃむる。
ほぁわん、てぃむるノ弟…」
真っ黒い少年が、ニカッと笑った。
だが…。
ぐがぁ…!
と、木の下から叫びが聞こえた。
「あっ!
忘れてた。
ウェンウェイさんが危ないんだ!」
弱い三日月の光の中、針葉樹の枝から、なんとか地上の有り様が見えた。
ウェンウェイは、なんと空中数メートルに浮かび、顔を真っ赤にして苦しんでいた。
殺し屋ピエロ、ブーフは、それを見てゲラゲラ笑っている。
「あれは、何の魔法だろう?」
「、、陰狼、、ウェンウェイの、、首を絞めている、、」
ちさが答える。
と、りぃんは、
「ボク…見セテアゲル…」
言うと、ふっ、とチェコとりぃん、は重なった。
チェコの体に、一瞬、電気のようなもの、が走り、
ふと、それが見えた。
「うわっ…!」
チェコは、小さく叫んでいた。
陰狼とは、狼の後ろ足を持った、二足歩行のバケモノで、五メートル近い上背があった。
今、陰狼は、人の手に近い、毛むくじゃらの手で、ウェンウェイの首を、ちょい、と摘まんでいるのだ。
「くっ…くそっ…、どうしたらウェンウェイさんを助けられるんだ?」
チェコは、怒りに震えた。
と、眠たげに、エクメルが言い出した。
「魔物を封じるには、三つの方法がある。
一つは、魔法陣に閉じ込めること。
二つは、呼び出している人間が持っている、契約の書を壊すこと。
三つは、より強い魔物により、追い払うこと、である」




