血
オバケはナイフでも切れないし、スペルも効かない。
だから人は、夜には山を歩かないのだ…。
「、、チェコ、、よく聞いて、、。
、、夜の子供は、、人間に成りすまそうとする、、。
人間に、なりたいオバケなの、、。
、、全部が判ったとき、夜の子供は、、蛇のように、、人間を丸飲みにする、、。
でも、、逆に、、知らない人間を傷つける事は出来ないの、、。
、、特に苦手なのは、、生きている人間の血、、。
そこには生き物のヌチが籠っているから、、」
「ええっ、そうなの?
そんな話、聞いたことなかったよ?」
「普通、教えない。
血を流すのは、命を削ること、、。
血の臭いは、他のオバケや肉食の獣を呼び寄せる、、。
だけど、、このままでは、、弟は、、夜の子供にそそのかされ、、悪いヌチになる、、。
そして、、悪いヌチは、、片牙を呼ぶ、、。
弟は、、なす術なく片牙に喰われ、、ここにいる人間全ても、、命を失う、、。
それを見て、、夜の子供は笑っている、、」
「夜の子供も悪いヌチなのに?」
「オバケは、、片牙の範疇外、、」
「そ…そうか…。
そういう事なら…」
チェコは、ウェンウェイに貰ったナイフを取り出すと、服の袖をめくり、腕を浅く切った。
ナイフには、血が付いた。
「おい、山人!
いや、夜の子供!
ここから立ち去れ!」
ビュン、とナイフを振った。
笑い声が途切れた。
「キャッ、血ヨ!
怖イワ!」
「逃ゲルノヨ!」
夜の子供の声が、遠退く。
チェコは、アンダーシャツの裾を切って、すぐさま、腕に巻いた。
弟は、真っ暗な眼を見開いた。
「オ前…、強イナ…」
チェコは笑う。
「俺は、チェコだよ。
君は?」




