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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
222/688

復讐

「…リンゴノ木…」


弟君の漆黒の目から、つっ、と涙が流れた。


「オ…

オオ…」


真っ黒な顔の、闇の塊のような眼球が、大きく見開かれる。


「…オニイチャン…」


ボサボサと大きく広かった長髪の中の、小さな顔から、涙が溢れた。


「オ…、オ…、オ…、ニイチャン…」


弟君は、チェコをぶら下げたまま、黒い肌をベショベショにして、慟哭していた。


チェコは、何か言葉をかけよう、とは思ったが、言葉が見つからなかった。

お気の毒、とも、気を落とすな、とも、とても言えない。

二人は、誰にも手を差しのべられる事もなく、村人に殺され、吊るされたのだ。


「オ…、オニイチャン…、ドコ?」


弟は、ふとチェコに聞いた。


「うん。

お兄さんは、下のゴロタの森にいるって…」


チェコは、気の毒そうに教えた。


「ボク、何年モ待ッテイルノ。

ナンデ、オニイチャン、来ナイノ?」


「あなたの、、お兄さんは、、冥府には入れない、、。

、、ここに近づけば、、四里の吊り橋を通って、、片牙が襲って来る、、。

、、それが判っているから、、お兄さんは、、ここへは来ない、、」


「カタ…キバ…!」


弟は、茫然と、声もなく叫んだ。


「ナゼ…片牙ガ、オ兄チャンヲ襲ウ?」


「、、同じ、冥府から拒まれた魂、、。

そういう魂同士は、、喰らい合う運命、、」


弟は、天に向かって、吠えた。


「オ兄チャン、ナニモ悪イ事シテイナイ!

急ニ皆ガ、襲ッテ来タ!

旅人サンガ故郷カラ送ッテクレタオ金、ミンナ横取リシタ!

えむーるニ帰ルタメノオ金、横取リシテ、ボクラノテントヲ焼イタ!

オ兄チャンハ、タダ、オ金ヲ返シテ、ト言ッタ!

ダケド、タダ、奴ラハ笑ッテイタ…。

ダカラ、オ兄チャン、復讐シタ!」


そうだったんだ…、とチェコは驚いた。

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