テール兄弟
チェコは、ウェンウェイにスペルカードを見せてもらったりして、すっかり楽しい時間を過ごした。
「さあ、明日は日の出からイヌワシ峠まで、厳しい登りになるかな。
もう、寝てしまうかな」
ランプを消すと、焚き火を囲んでチェコとウェンウェイは、毛布にくるまった。
だが、チェコは毛布の中で、テントの布外に視線を走らせる。
「、、チェコ、、?」
「ちさちゃん、やっぱり、これオバケの気配?」
「、、チェコ、、気がついた、、?」
「うん…。
なんか、この山に入ってから、だんだん判るようになってきたよ」
なにか闇の奥から、ひやり、とした実在をチェコは感じるようになっていた。
チェコとちさが囁いていると、
「心配無いかな。
あれは、このテントには入れないかな」
「あ、ウェンウェイさんも気がついてたんだ」
焚き火の炎越しに、言葉を交わした。
「あれは悲しい奴かな。
まだ子供だったかな」
闇の中、チェコが、身動ぎをした。
「子供なの?」
「、、兄弟。
…今、、いるのは、、弟、、。
弟、、ウェンウェイ、、言うように、、無害、、。
でも、、兄、は、、違う、、」
「兄は、ゴロタの森から、決して上がっては来ないかな。
片牙を恐れているかな」
「あー、
四里の吊り橋の先、赤竜山にいる、あの片牙!」
チェコは思わず声を上げていた。
「そうかな。
兄弟は憐れにも、冥府への立ち入りを拒絶された、さ迷う魂、片牙と同類かな。
しかし…。
弟はたぶん、兄への執着さえ無ければ、冥府へ帰れるかな」
ウェンウェイは、言った。
「みなしごの、テール兄弟かな」
チェコは息を飲んだ。




