霧の中
「エンチャント魔法の、霧?
霧って、瞬間、魔法じゃないの?」
「去年、国内メーカーが発売したエンチャントよ。
でも、今のところ、あんまり売れてる、って話は聞かないわねぇ」
「ニャハハハハ!
僕は、時代の先端を行く、新進気鋭のスペルランカーなのだ!」
チェコの周囲は、手足も見えないほどの、真っ白い霧に覆われてしまった。
「でも、お兄さんも俺が見えないんじゃないの?」
「見えない!」
タッカーは断言した。
「ええっー、どーすんの、これぇ!」
チェコは叫んだ。
「何かスペルは発動しないのか?
しないなら、そろそろ僕は、次の手を打つけど?」
チェコは、少し焦りながら。
「エ、エンチャント!
ウサギの巣穴」
「んん?
何だい、そのスペルは?」
霧の中から、タッカーが問いかける。
「へへへ、キャサリーンねぇちゃんに貰ったんだ。
自軍のウサギは、このエンチャントで常に守られるんだぜ」
「馬鹿だなぁ、君は。
そうそうウサギなんて召喚獣に使わないだろ?」
「召喚!
草原ウサギ!」
「…ま、まぁ、エンチャント貼るぐらいだから、ウサギは持ってるんだろうけど…
これで終わりだね?」
呟き、タッカーは叫んだ。
「じゃ、こっちも、召喚獣、毒蛇!」
「うーん、雲の中みたいなんで、そう言われても、大きさがピンとこないなぁ」
チェコが困惑すると、
「まぁ、それも僕のデッキの強みなのさ。
でも、特別に教えてあげると、パワー、タフネスが二の毒蛇だぞ!」
「うわぁ。
そんなに強いの?」
「ウサギで殴りに来ないことをすすめるよ」
「でも、見えないんだから、そもそも殴れないよね?」
タッカーは、わざとらしく口笛を吹いた。
「まぁ、じゃあ攻撃はナシでいいね?」
「うん」
「じゃあ、僕のターンだ!
毒蛇で、アタック!」
ぐぁっ、とチェコが叫ぶ。
「チェコ! …平気か…?」
「やられたぁ…。
いったい、どうして!」
ハーハッハ、
少年、心配するな。
毒マスターである僕は、ヒットダメージなど狙わない。
ただし君は今、一ポイントの毒ダメージを受けたよ」
「ど…毒ダメージ?」
霧の中から声がした。
「そうだ。
毒ダメージは、十ポイントで君の負けだ!」
チェコは、呻いた。
「そ…、そうなんだ…。
だけど…、どうして、この霧の中で攻撃を当てられるんだ?」
チェコは霧の中、首を傾げた。




