父親
「俺の友達の錬金術師は、それは見事な機械の兵士を作り上げたかな。
完全な球体の体は鋼鉄製で、ハンマーで叩かれてもビクともせず、心臓は魔石で出来ているかな。
目は…」
「一キロ先のリンゴにとまったミバエも見逃さず、耳は森の狐の足音も聞き分ける…」
チェコが言うと、まろびとは唖然として、
「お前、ダリアの孫かな!」
チェコは、ニィと笑って、
「ダリア爺さんがよく言ってた、将棋キチガイのハムントさん?」
「ハムントは俺の同僚かな」
「じゃあ、やっぱり、錬金術の本を書け、って煩かった書記官のウェンウェイさんだ!」
「そうかなそうかな!」
まろびとはチェコを抱きしめ…。
「まさか、ダウ様のお子をこの手に抱けるとは思わなかったかな」
「ダウ様?」
チェコが首を傾けたので、まろびとウェンウェイは全てを察して、
「いや、お前の御父上は、ダウってあだ名で呼ばれた、あー、大変立派な方だったかな」
チェコの顔が輝く。
「ウェンウェイさん、
父さんを知ってるんだね。
ダリア爺さんは何も教えてくれないんだ!
話を聞かせて!」
ウェンウェイは、髭モジャの顔をくちゃくちゃにして考え込んだが、
「まぁ、こんなところでお前に会うとは奇跡に近い事かな。
俺の知っている限りは、話すかな」
と、チェコと自分のコップに、二杯目のお茶を注ぎ入れた。




