日差し
食料を大きな袋に詰め、チェコとまろびとは背負った。
大きなハムの塊も入っているし、岩塩もある。
チェコは、ナイフを一本貰った。
「古いものだけど、使うと良いかな。
山では、きっと必要になるかな」
山羊には、たっぷり餌をあげて、まろびととチェコは針葉樹の森を出発した。
「これを食べておくと良いかな」
まろびとは、袋から手のひら一杯の松の実を、チェコにくれた。
「おおっ!
これ、旨いね」
「上は寒いから、油を取った方がいいかな」
明るい針葉樹の森を歩き、やがて、再び、白骨樹が常に風に震える尾根筋に出た。
チェコは、まろびとに借りた毛布のマントを羽織った。
随分、風が防げる。
白骨樹の間を縫うように尾根を歩き、そこから今度は源泉側に降りて行く。
そこも針葉樹の森だったが、南に向くため木が多い。
日差しは強烈にチェコを突き刺し、チェコはマントを脱ぎ、すぐに上着も脱いでしまった。
「さっきまで、あんなに寒かったのに!」
「陽が当たると暑く、太陽が隠れると途端に凍えるかな。
こっち面に家を建てると、食べ物が腐ってしまうかな」
確かに…。
体感では、夏のように肌を焼く日光だ。
「もうすぐ夕方だから、後一時間も歩いたら、夜営の準備にするかな」
太陽は、いつか黄色く傾きかけていた。
まだ高い位置にあったが、だんだん森も深くなって来ているので、まろびとの言うように、早めに準備するのが無難だった。




