ベスト八
「チェコ君、気をつけて!
相手は、子供でもプロのスペルランカーよ!」
キャサリーンは声を荒げる。
タッカーはヘラヘラと笑い…。
「その通りなんですよねぇ。
私タッカー・トラッテーロは、弱冠十六にして、昨年のヴァルダブァ国内予選では、ベスト八に勝ち上がった新進気鋭のスペルランカーなのでございます」
痩せた胸を張った。
「凄げー。
ベスト八に勝ったんだ!」
チェコは目を輝かせるが、キャサリーンは違うわ、と釘を刺す。
「ベスト八までで負けたのよ!」
「えっ、そうなの?」
タッカーは慌てた。
「ちょ…、ちょーっと待って!
国内大会の、最後の八人の一人なんだから!
負けた、とか言わないでよ、もぅ!」
「だってベスト八で勝っていればベスト四じゃないのよ!」
チェコは指を折って計算をし、あ、そうか…、と呟く。
「いや、いや、いや。
そうだけれども…。
それはそうなんだけれども…。
人には言い方ってもんがあるでしょう?
ベスト八よ。
ベスト八。
負けたって言うかねぇ…!」
タッカーは、声をひっくり返して抗議する。
「ベストエイトは凄いよ…。
そんなに、気にすることないよ、お兄ちゃん…」
チェコは気の毒そうに言った。
「あ~何か、やな感じの空気になっちゃった!」
タッカーは頭を抱えてしまう。
「言っとくけど、僕に勝った奴は、ベスト二まで行ったんだからねッ!」
「決勝で敗れたんでしょ!」
タッカーは、キーと叫びながらモジャモジャの頭を掻きむしった。
「もう潰す!
後で泣いたって、知らないからあぁぁぁ!」
叫びながら、緑のアースを、三つ浮かべた。
「よし、俺たちも行くぞ、パトス!」
チェコとパトスも、アースを浮かべた。
先にアースを浮かべたタッカーが、問答無用で、スペルを発動する。
「エンチャント、霧!」




