贅沢
猪のモモ肉らしき巨大な塊が、塩漬けにされ、幾つも天井からぶら下がり、棚には、サラミやチーズもふんだんにある。
「凄い。
山の中で、こんなに贅沢に暮らせるなんて!」
チェコは、驚くと言うよりは、羨ましがった。
リコの村では、玄米と漬け物が精々だ。
「贅沢じゃないかな。
山の上では、穀物の方が貴重かな。
この辺では、質の良い毛皮になる白テンが住んでいるけど、小物は猟師は取りにくいから、毛皮を売って、猟師の要らない肉を分けてもらうかな。
チーズは、裏で飼っている山羊の乳で、自分で作ったかな」
「へー、山羊も飼っているんだ。
餌はどうするの?」
「山羊は贅沢は言わず、何でも食べるがな。
春から秋は、その辺の草で良いし、冬用には干し草を作っておけば事足りるかな」
ハハハ、とまろびとは笑った。
「イチゴでジャムも作るし、少しはお酒も作るかな。
選り好みをしなければ、山は、食うには困らないかな」
チェコは、羨望の眼差しで呟く。
「なんか、こういうの、良いなぁ…」
「チェコ、、山は、、とっても孤独、、
山人も、、いつも狙っている、、」
ちさは釘を刺すが、まろびとは笑い、
「猟師に化けて、しょっちゅう山人も現れるかな、
見分けられるようになったら、ちょうど良い話し相手かな」
チェコは驚いた。
「どうやって見分けるの?」
「まずは体温かな。
化け物は、体温が低いかな。
体についた雪も溶けないかな。
そして一番は…。
山人は、姓と名を続けて言えないかな。
続けて言うと、音がセイメイ、生命になり、化け物はそれを持っていない、かな」