まろびとの家
玉イチゴの丘の上には、背の低い灌木が、不気味にねじ曲がって、まるで苦しみにもがく骨のように、白い枝をくねらせている。
「うわぁ…。
なんか、木の骸骨みたいだねぇ」
まろびとは頷き、
「白骨樹というかな。
風や雪が、樹皮まではぎ取り、こうしてしまうかな。
しかし、それでも、こうして生きているかな」
所々、緑の葉っぱが確かに生えていた。
「この尾根筋から降りてしまえば、風は少しは楽になるかな」
確かに、気を許すと吹き飛ばされそうなほど、強い風が吹いていた。
しばらく尾根を登っていくと、大きな岩が突き出しており、その横をまろびとは、源泉とは逆方向に降りていく。
すぐに木々が茂りだし、風がずっと楽になる。
しかし森は、チェコの知っている森とは、ずいぶん違った。
「なんかスカスカした森だねぇ。
いや、林?
雑木林、って訳じゃないよね?」
「チェコ、、ここでは、、下のゴロタの森のような広葉樹は育たない、、
針葉樹の森、、」
ほぅ…、とチェコは周りを見回す。
「あ…、あれは松で、あれは杉で…、後は判らないや」
アハハ、とチェコはごまかし笑いをする。
「あれも松かな。
あっちはイチイというかな。
針葉樹は、脂が多いから焚火はしやすいかな…。
さあ、ここが俺の家かな」
それは、予想外なほどに立派なログハウスだった。
「すっげー。
まろびとさんが一人で作ったの?」
「猟師に、ずいぶん教えてもらったかな」
ニコニコとまろびとは言う。
ログハウスの中には、食糧がたっぷりと蓄えられていた。