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精
チェコとちさは、一旦、まろびとの家に荷物を取りに行くことになった。
急いでいる、とチェコは言ったのだが、まろびとは返答した。
「食糧が必要、かな」
一も二も無かった。
お腹は空いているし、たぶんヒヨウたちも身一つで来るかもしれない。
食糧は…、絶対必要だ!
源泉から玉イチゴの丘を登ると、やがて平坦な山道に出た。
別に整地されている訳ではないが、ずっと渓流を登ってきたチェコにとっては、やっと現れた平地だった。
「あー、なんか、今すぐ寝転がりたい気分だよ」
「ずいぶん、、登った…。
疲れて、、当然、、」
ちさも、労う。
まろびとは、髭だらけの顔をクシャ、と崩した。
笑っている…、らしい。
「お前は、ずいぶん変わった子供、かな。
影ぬりと友達になるなんて、普通は無理かな」
「え、そうなの?
ちさちゃんは、俺とだけじゃなくて、ミカさんとも友達だよねぇ」
チェコも笑う。
「ミカ、とっても優しい、、大好き、、」
ちさも笑った。
ふぅむ、とまろびとは考え込み、
「もしかすると、影ぬり、は精なのかもしれない、かな
まぁ、俺に判る訳もないかな」
アハハ、と、まろびとは大声で笑った。