雪
渓流なのか滝なのか、もはや本別はつかなかったが、そこに流れているのは湯、しかも、かなりの熱湯だった。
「うひゃあ、
やっと服を着れたと思ったら、途端に脱ぎたくなっちゃったよ!」
湯がかからないよう、避けて登っていても、かなり暑い。
しかも、崖にも等しい登坂の途中なので、脱ぐ訳にもいかなかった。
それでも、なんとか腕を捲り、シャツの前をはだけ、せっせと渓流を登っていくと。
岩だらけの平地が現れた。
岩は皆、赤茶色に染まっている。
「おお…。
あの沼みたいだ!」
岩から岩へ、跳んでいくと、グツグツと沸き上がる熱湯が、岩山の奥で湯気を上げていた。
「ここが源泉?」
「きっと…、そう…」
チェコは、周囲を見渡す。
「じゃあ、イヌワシ峠は?」
ちさが、あるかないかの手を上げた。
「チェコ、、あそこが、、イヌワシ峠、、」
全てが茶色の源泉の奥に、ぬぅ、と聳える高山があった。
まだ森林限界ではないので、山は緑に覆われている。
「えーと?
どうやって、あそこに行けばいいの?」
「源泉を回り込んで、、ずっと左側に行くと山道、、」
成る程、左側に登ると、緑の丘のようなものがある。
「ちさちゃん、この辺に、襲って来そうな獣はいない?」
ちさは、んー、と考え。
「ここは、、ずいぶん、、高地、、鳥も獣も、、大きくない、、
ただ、、気候が、、下と、、だいぶ違う、、。
風も強いし、、雨も、、もしかしたら、、雪も、、」
「もう春だよ!」
「この辺では、、ちょっと雨と風が重なると、、時に、、今頃でも雪になる、、それが危ない、、命あるものには、、」
ふーん、と呟き、
「まぁ、出たとこ勝負だよね」
と、チェコは歩き出した。