プルートゥ
「ありがとうミカさん。
きっと返すから」
いいよ…、とミカは俯き、
「だけど…、ミカの素顔、見たの秘密よ」
と、はにかんで笑った。
うん、いいけど…、とチェコは首を傾げる。
「それよりチェコ。
先を急ぐんでしょ。
早く、行きなさい」
ああ、そうだった、とチェコは気がつき、
「ミカさん、本当に助かったよ。
靴と服も、洗って返すから」
ミカは笑った。
「それも、プレゼントよ。
どうせ、もう使わない物だから、貰ってくれて、こっちも助かるの。
ちさちゃん、また今度ね」
「ミカ、、絶体、、また、、会いましょう、、必ず、、」
チェコとちさは手を振って、脱衣場の奥の壁を、いや、渓流を登っていく。
「あの子…。
まるで猿ね…」
クスリ、とミカは笑うが…。
「楽しい再会だったようだな」
巨大な体を、軍服と漆黒のマントに包んだ男、プルートゥが、岩の影から現れた。
「あらプルートゥ。
女の子の着替えを覗くなんて、悪趣味ね」
ミカは、薄く笑った。
プルートゥは、クツクツと笑い。
「あれが、お着替えだったのかい?
いやはや、世代のギャップかな。」
ミカは、ムッ、とプルートゥを睨んだ。
「チェコは、ただの子供。
だから、あなただって殺さなかったんでしょ!」
プルートゥは、白い歯を見せ、
「あれが最も残酷な死に方、
と、思ったんだがなぁ。
生き残った上に強くなるとはね…」
喉奥で笑い、言った。
「面白い小僧だ。
果たして、化けるのか、潰れるのか、とっくりと見せてもらうよ」
顔の半分はある大きな顎の上、軍帽に隠れた目が、異様に輝いていた。