デッキ
「事情は判ったわ」
ミカは、いつもの、自分のためだけに仕立てられたドレスを纏い、体には包帯を巻いていた。
一方のチェコは、温泉で体についた泥を洗い流していた。
チェコの話は、あっちに飛び、こっちに飛び、要領を得なかったが、ちさが詳しく言い添えてくれたので、身支度を整えた頃には、チェコがどうして、ここに来たのか知ることが出来た。
ハァ、と再び溜め息をつき、
「それにしても、トレースのカード一枚で、ハンザキを撃退するなんてメチャクチャね、チェコも…」
自分が、この、まるっきりの子供に負けたのも、決して偶然ではないのだ、と気がついた。
この子には、才能がある。
まだ、どの程度の力、とも判断出来はしないが…。
「あーさっぱりした」
ニコニコとチェコは、生まれたままの姿で、ミカの前に出て来た。
ミカの方が、赤面してしまう。
まだ、子供々々しているが、そろそろ学校にだって上がる歳だ。
「もう、しょうがないわね!」
ミカは、自分の衣装カバンから、パンツスーツを選んだ。
実のところ、汚れ仕事用の戦闘スーツだが、ズボンはそれしかなかった。
「おー、
体にピッタリ貼り付くみたい!」
「それから、これは予備のスペルボックス。
このカードファイルのカードで、自分のデッキを組なさい。
言っとくけど、ウサギなんて無いわよ」
チェコは、目をウルウルさせて、
「ミカさん、って、やっぱり優しいな、
ありがとう!」
何か言い返そうか、と思ったが、チェコは既にファイルに顔を埋めていた。
あたしにも…、こういう頃、あったな…。
ミカは、ふと、昔の自分を思い出した。