湯
「凄いよ、見て、ちさちゃん!
ハンザキのカードが二枚になっちゃった!」
チェコは泥だらけの顔に、笑顔を爆発させた。
「チェコ、、初めから、、こうするつもりだったの、、?」
うーん、とチェコは上空を眺め、
「もちろん、形勢次第だったけど、もし、こうなれば面白いな、って考えてはいたよ!」
二ヘラ、と笑う。
はぁ、とちさは溜め息をつき、
「ハンザキ、、引き返して来ないうちに、、早く渓流を登ってしまう、、」
と、アドバイスをした。
「あ、そうだね」
言ってチェコは、岩だらけの渓流を辿って歩き出す。
しばらく進むと、ふと立ち止まり。
「ね、見て、ちさちゃん。
こっちから、お湯が流れている」
渓流は、曲がり、段となり、時には小さな滝を形成しながら続いていたが、本流らしき流れとは別に、湯気を立てたお湯が、岩の間を縫うように、サラサラと流れていた。
「ちょっと登って見ようかな?」
ちさも、元の地形がかなり変わってしまっているので、何が正解とも言えなかった。
「かなり、、高そう、、」
崖を見上げるのみだ。
「うん、でも…。
俺、登ってみるよ!」
言うと、チェコは、迷わず湯を辿って崖を登り始めた。