逃げる
チェコは渓流を走った。
が、渓流も、これほど上流になってくると、川幅も狭くなり、チェコよりも背の高い丸石が、ごろごろと道を塞いでいる。
ブオゥ…!
ハンザキは、機敏に崖をよじ登ると、小山のような巨体を揺らしながら追って来る。
チェコは避けなければいけない大岩も、ハンザキは、その巨体とヌルヌルの体液で、すり抜け、弾きながら一直線に迫って来る。
「くそ…、
俺がブーツさえ履いていたら、もっと早く走れるのに!」
裸足で走るには、渓流は石が多すぎ、尖った小石なども混じり、危なかった。
チェコはアースを浮かべた。
同時に、口にくわえたカードを捲る。
「お! 出来てた!」
召喚獣ハンザキ
緑アース六
七/七
一アースで再生
だった。
チェコの頭上には、黒っぽい緑のアースが二つ浮かんでいる。
そして、ちさとエクメルもアースを浮かべた。
アースは十秒に一つ、増えていく。
が、二十秒で消えてしまう。
つまり、十秒、チェコが逃げ切れば、アース六のハンザキを召喚出来る。
「チェコ、、早く、、逃げて、、」
ちさは、急かすが、
「いや…、足場が、
さっきまでと違って、尖った石が多いんだよ!」
十秒、普段なら、息をするだけで過ぎるような時間が、必死で逃げている状況では、本当に長かった。
ゴオォ!
岩を押し退け、ハンザキが迫って来る。
靴さえあれば、十分逃げられる相手だったが、今は、ハンザキの方が早い。
飢え、もハンザキを早くしているのかもしれなかった。
4日から6日までお休みします。
よろしくお願いいたします。