補食
水は、多少温泉が混じっているものか、冷たい、ということはなかった。
ハンザキは、巨大な体を、微かにも動かさない。
「…ちさちゃん、さっきは足の裏が水に触れただけで飛びかかって来たのに、なんでハンザキは動かないんだろ…?」
「ハンザキ、、本気、。
チェコは、、煩い蚊を追うとき、、どうする?」
チェコは、ふ、と考え。
「確実に捕まえられるまで、待つ、かな…。
あ、そうか。
俺が近づくのを待っているのか…」
ハンザキは、巨体を、じっ、と動かさない。
池の水は、さっきハンザキが暴れたため、泥で濁って、水中は全く見えなかった。
チェコは、足を、砂の中で動かせてみるが、ハンザキに変化は無い。
チェコとハンザキの間は、未だ五メートルあり、あと二メートルは近づかないとスペルは使えない。
「ちさちゃん、ハンザキって速いの?」
「長距離ならノロい、。
でも、、こういう場合、、水中でなら、、素早い魚も難なく補食する、、」
二メートル近づけば、トレースが出来る。
そして、スペル発動から、だぶん新しいカードが出来るのに、一分ぐらいはかかるかもしれない。
その間、チェコは裸でハンザキから逃げおおせなければならなかった。
チェコは、生唾を呑み、
「ちさちゃん、もう一歩、進むよ…」
と、静かに告げた。