ハンザキ
「渓流って言うから、もっと流れが荒いかと思ったけど、このぐらいなら、歩きやすいね」
チェコは、水辺をバチャバチャと歩いていた。
裸なので、靴が濡れる心配もない。
沼から一旦、チェコの身長以上もある巨石が連なった滝を登ったのだが、その後は、川と言っても幅数メートルの流れが、静かに注いでいる、のんびりした小川くらいの流れだった。
「本当の、、、渓流、、その、苔の場所、、。
流れが、、最近、、変わった、、」
ちさは教える。
言われてみると、巨体な丸石のチェコの頭の上辺りに、真っ直ぐに苔が生えていた。
上は緑濃い地上の苔で、線の下は黒っぽい水苔だった。
「うわぁー、ここまで水だったの!」
チェコは背伸びをして、苔に触って驚いた。
そうして見ると、川幅十メートルを軽く越える、渓流とすれば、かなりの大河だ。
「魚は死んじゃったのかな?」
「だぶん、、大半は沼に降りたはず、、。
沼サンショウウオも、、この辺に、、いたのかも、、」
「あれ? 渓流に住んでたなら、沼サンショウウオじゃないよね?」
言ってチェコは、トレースのカードを見た。
なんとか、沼サンショウウオのトレースは成功していた。
「見て、見て、ちさちゃん!
やっぱり、沼サンショウウオじゃないよ!」
新しく出来たカードには、
ハンザキの子供、と書いてあった。
「ハンザキって、確か凄いんじゃなかったっけ? ちさちゃん?」
「ハンザキ、、半分に裂かれても死なない、、再生能力を持つ召喚獣、。
噂では、、この辺の主なら、、ワニを餌にするほどの大きさ、、と言う、、」
チェコの目が輝いた。
「凄いよ、ちさちゃん!
俺、今、トレースだけは持っているし!」
大喜びのチェコだが、ちさは、
「この、、水では、、そんな怪獣は、、住めない…」
と、呟いた。