群れ
チェコは、波立つ沼を、何度も波に飲まれながらも泳ぎきり、岸辺に着いた。
だが沼は、底が泥のため足をとられて歩きにくい。
なんとか、ちょうどいい石を見つけ、それを足掛かりに、沼を出た。
「、チェコ、、水に潜って、、」
ちさが叫び、チェコは判らないままに、慌てて泥沼に飛び込んだ。
行き違いに、黒い獣が、姿を現した。
「驚いた…。
黒い豹だよ…。
しかも…、群れを作っている…?
豹が、群れなんて作るの?」
黒い獣ばかり十数頭の群れは、低く唸りながら、用心深く歩いてくる。
「、、普通、、親子ではない、豹は、、群れ、、作らない。
たぶん動物、、川の流れ、、変わったのを知ってる、、
いつもでは、、生きられない、、と思って、、群れを作って、いる、、」
黒豹の中には、血を流しているものも、いた。
「あれ、
見た、ちさちゃん、
たぶん西側斜面で、ドゥーガと戦ったのって…」
「そうかもしれない…
これだけでは判らない、、
でも、、何のため集まっているのか、、不思議…」
そう…。
山は、上に行くほど森も痩せ、気温も下がり、やがては岩や灌木だけの世界になってしまう。
麓の、ゴロタの森が、一番豊かな狩り場のハズだ。
しかし、普段はしない群れを作ってまで、どうして、この獣たちは山に登って行くのだろう?
十分程待ち、ちさは、もう安全、と教えてくれた。
チェコは岸に上がり、ヒヨウの言うように、すぐ近くにあった、渓流の岩場を登り始めた。
チェコは、裸で、スペルカードも二枚しか持っていなかった。