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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
162/688

必ず

タッカーは、山は全くの初心者で、ウスバ虫の卵も判らない、いわば薪拾いも出来ない都会人だった。


一人で野営をすることはおろか、こんな場合に、どこに行けば安全なのかさえ、全く知らないのだ。


俺が、調子に乗ってトレースなんてしてるから!


チェコは自分を責めた。


だいたい常に、チェコは調子に乗って、余計なことをして失敗するのだ。

いつもパトスにも怒られているのに…。


「どうしよう。

タッカー兄ちゃんのところに戻らないと!」


「チェコ、、とても無理、、自分の安全を考え、て、、」


ちさが、チェコを止めた。

もはや、チェコの周囲は、とても沼とは言えなかった。


ごぅ、と音を立てて、はるかかなたで大木の茂みが崩れ去った。

水は、小山のように盛り上がり、また、飛沫を上げて砕け散り、チェコは浮いているだけでも、やっとだった。


「そうだ!

スペルがあれば!」


思うが、素っ裸で、チェコはトレースのカードだけを持って沼に入って来たのだ。


巨大な波が、チェコの図上に覆い被さってきた。

波に飲み込まれ、チェコは再び水中を漂った。


まずい…!

まずいぞっ…!

これじゃあ、とても、タッカー兄ちゃんは…。


体の力が抜けていたのが幸いしたのか、程なくチェコは水に浮かんだが…。


「チェコ、、早く、、岸に、、戻る、、」


「だって、タッカー兄ちゃんが!」


「もう、、ちさも、、方向、判らない、、」


チェコにも、この荒れ狂った波の中、タッカーと別れた岸がどこだったのか、まるで判らなかった。


「けど…!

タッカー兄ちゃんは、山のこと、全然知らなくて!

このままじゃ…、死…」


口に出そうとして、チェコの背筋を、たった今まで一緒に笑っていた人が、この世から消えてしまう、という真実が冷気になって走り抜けた。


泣きも、叫びもできずに絶句した、チェコの耳に、微かな声が聞こえた。

振り返ると、遠く波間に、ヒヨウが泳いでいた。


「良かった。

無事だったか!」


「ごめん、ヒヨウ、タッカー兄ちゃんは、あの岸にいたんだ。

俺、沼サンショウウオをトレースしていて…」


ヒヨウは、後方を振り返った。


「そうか…。

あの辺なら、おそらく…」


ヒヨウは、一瞬、考え。


「チェコ、お前は、岸に上がって渓流を辿れ!

源泉から、イヌワシ峠はすぐそこだ!

俺は、必ずタッカーを連れて峠に行く。

お前は、イヌワシ峠で待っていてくれ」

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