濁流
チェコは軽快に水中に潜り、巨大な岩の下で、さっき見た巨大な生物を発見した。
沼サンショウウオ。
チェコも、名前だけは聞いたことがあった。
確か、最大では二メートルを超える獰猛な生物で、しかも水陸両方で活動できるはずだ。
チェコはトレースのカードを出し、早速発動させた。
その瞬間。
チェコは途方もない巨大な水流と、おそらく爆発音の波動の衝撃に襲われた。
強力な力に、内臓を圧迫され、体内の空気を吐き出されてしまった。
上も下も判らない錐もみ状態の水流に翻弄され、チェコはブラックアウト寸前に追い込まれたが…。
「チェコ、、、泳いで、、」
ちさの声が、チェコを励ました。
何も考えないまま、チェコは必死で水を掻いて進んだ。
がぼぅ!
チェコは、飛沫を上げて、水面に飛び出していた。
かぶりつくように空気を吸い込み、数分間、ひたすら空気を吸い続けた。
やがて落ち着いてくるにつれ、周囲の状況も見えてきた。
沼が、まるで濁流の様に波立ち、うねり、渦巻いていた。
「うわぁ!
一体、どうしたんだ?」
チェコは、木の葉のように流されながら叫んだ。
「、、たぶん、、、」
ちさが言う。
「ヒヨウが、、、思ったように、、、川の流れ、、、が、、変わった、、」
「えっ、どういう事?」
「上流、、で、、落石か、、何か、、あり、、、、それがダムに、、なり、、、たった今、、決壊した」
ひえぇ!
チェコは、水中で暴れた。
「どうしよう!
タッカー兄ちゃんを置いて来ちゃった!
大変だ、兄ちゃん、死んじゃうよ!」