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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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非道

「ええっ!

マッドスタッフって、けっこう有名なスペル開発会社じゃない。

ヤバい会社だったの?」


「マッドスタッフは、確かに、よく耳にすると思うけど、彼らの主力は少ないアースで大きなスペルに近いことをする、いわゆる劣化版スペルで名を売っている会社なのよ」


「ああ、プロのスペルランカーが使うような、スペル無効化じゃなくて、三アースで打てるけど発動が遅い「事前告知」とか、二アースだけど二アースまでのスペルしか無効に出来ない、「ちょっとビックリ」とか。


別に悪いスペルじゃないと思うけど」


「だけど、そういうものは、売れても、たかが知れているのよ。


本当に大ヒットしたのは「使用済み」ぐらいで、あれも実際は裏スペルの劣化版と言われているわ」


「…裏スペル…?」


パトスが聞いた。


「裏スペルっていうのは、禁止カードも含めていて、狭く言うと安全確認の取れていない、中には作った本人さえ、どう発動するのか分からないような不安定なスペルを含んだ、いわゆるジャンクスペルだよ。


大会などの公式戦で使えないのはモチロン、普通の戦いでも使ったことが証明されたら、憲兵さんに捕まってしまうんだ」


チェコの説明にキャサリーンは頷き。


「スペルが安全なのか、はとても重要な問題なのよ。

小さくは、使用者が、怪我や病気になったり、もっと大きく言えば、この世界そのものの摂理に抵触してしまったら、大事件になるでしょう?


スペル製作者には、大きな責任が伴うものなのよ。


例えば、昔「天災」と言うスペルがあったの。

全ての召喚獣、スペル、アイテムを破壊して、さらにスペルランカーが貯めていたアースも消滅させるという強烈なスペルよ。


ところが、あるコンボのキーカードになって、多くの人に使われ出すと、農作物の不作が何年も続いてしまったの。


学者が研究して、この「天災」が、実際の神の摂理に抵触する、つまり神官が行う呪法から、そうとうパクって魔法スペルに作り替えたものであることが判明したのよ。


「天災」製作者は、スペル開発の資格をはく奪され、財産も没収されたけど、その後十年にわたって農作物はとても不安定だった、と言われているわ。


最近では、人気アイドルのリナ・リナが、実は膨大な仕事をこなすため、「分裂」のスペルを常用していて、ある日、リナ・リナは、ついに一人に戻れなくなった、というニュースも衝撃的だったわね」


「あー、ダリア爺さんが聴いてるラジオカードでも、騒いでいたねぇ。

結局、あの人たち、どうなったの?」


「もはや別人格になってしまって、同時に、彼女の溢れる才能は枯渇した、と言われているわ。

天才も、二分の一になったら常人だった、ってことかしらね」


「でも、あれって、スペルが悪いわけじゃないよねぇ」


「それでも「分裂」の危険性が判明し、禁止スペルになったのは、それだけスペル製作者の責務は重い、っていうことなのよ。


でも、マッドスタッフは、今もハナを狙って汚い仕事をしようとしているの」


「それ…、憲兵さん…、助けない?」


「彼らは事件が起きてから、初めて動くものなのよ。

マッドスタッフも、まがりなりにも正式な会社なわけだし、ハナが連れ去らわれてから何を言っても、ハナは、もう帰らないのよ」


「マッドスタッフ…、妖精…、どうする?」


「彼らは、妖精の持つ魔法の核、マテリアルを、取り出して、スペル解析にかけようとしているの」


「スペル解析?」


チェコも、さすがにスペル製作者の手法までは判らなかった。


「近年、解析スペルが急速に発達して、人間をスペル解析して病気治療に役立てたり、古い建物をスペル解析して大規模な補修に乗り出したり色々ニユースになってるの、知らない?」


「あ、それって、北の有名なホワイトファルコン城が、何百年かぶりで新しくなった、って」


「そうそう。

解析スペルは、近年の魔法の新境地なのよ。


だけど…。


妖精のマテリアルを取り出す、ということは、妖精を殺す、ということなのよ」


チェコもパトスも息を飲んだ。


そんな非道が行われようとしているとは、全く思いもしなかったのだ。

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