ウスバ虫
「ヒヨウ、この味噌、旨いよねぇ」
チェコは白米に玉子をかけ、味噌で味をつけて、幸福そうに微笑んだ。
ああ、エルフの味噌だ、とヒヨウは玉子を混ぜ蒸らした玉子ご飯をかっ込む。
「蕎麦や雑穀で作るので手間はかかるが、普通の味噌にはないコクが生まれるだろう?
これで汁を作っても素晴らしいんだ。
野菜が手に入ったら、今度、作ってやろう」
タッカーは、まだ落ちつかなげだったが、食欲はあるようで、
「この魚は良い味だね。
僕、小骨は嫌いなんだけど、全く無いんで食べやすいよ」
と、虹カマスの干物を噛み切った。
もぐもぐ、と玉子ご飯を食べながら、コートの中に腕を突っ込む。
又、食べながら、今度は足をポリポリ掻いて…。
ゴクン、とご飯を飲み込んだ後で、何気なく腕を見て、
「うわぁ…
こんな、一杯、虫に刺されている!」
慌ててコートを脱ぐと、全身に小さな赤い腫れがあった。
「あー、もしかしてタッカー兄ちゃん…」
チェコが呟く。
「枯れ枝、拾うとき、ウスバ虫の卵が付いてる枝を拾ったんじゃない?」
タッカーは悲鳴を上げた。
「何、これ卵なの!」
慌ててピッチリとしたシャツとパンツも脱ぎ捨てた。
「タッカー、心配はいらない。
ウスバ虫は卵に小さな毛があって、かぶれるんだ。
そこの水場で体を洗えば、すぐに良くなる」
タッカーは、必死で走った。
暫くすると、
「…治った…」
と、項垂れて戻って来たが…。
チェコとヒヨウが、自分の服を燃やしているのを見て、愕然とした。
「ごめんね。
でも、これは焼くしかないんだよ」
チェコが、申し訳無さそうに言った。