岩の中
ヒヨウが食事場所に選んだところは、小さな小屋なら建つほどの、大きな、横に寝た岩の上だった。
横に生えた木から器用に乗り移り、ヒヨウは、枝に火をかけて米を炊く。
苔の上はふかふかで、岩の上とは思えない快適さ、だった。
「ええっーと、夜にここを住み処とする山女は、今はどこにいるのかなぁ?」
タッカーは、落ち着かなげに問いた。
「判らないな」
ヒヨウは、鍋に注意を集中しているようだった。
いつの間にか消えていたチェコが、岩をよじ登って、
「ヒヨウ、玉子、あったよ!」
と、四つの玉子を差し出した。
「お、良いな。
米が炊けたら、混ぜるか」
「えー、生卵をご飯にかけた方がいいよ」
「そうか?
玉子を混ぜても旨いと思うが…。
タッカーはどう思う?」
タッカーは、そわそわと、
「あ、うん。
僕は、生卵はちょっと…」
えぇー、とチェコは拗ねて、苔の上に寝てしまう。
「玉子を混ぜる所と、白米の部分を別ければいいだろう」
日常の会話の中…。
タッカーは恐々と、自分の座っている巨石に、耳を近づけてみる。
どうも…。
住み処なのに、昼はいない、と言うのは、腑に落ちない。
その謎と、この巨石には、なにかしらの関係があるのではないだろうか…?
そんな疑念が、頭から払えなかった。