石の墓地
不意に、土の中から、大木より数倍でかい巨石が突き出している。
岩は、まるで巨人の墓石のように角ばって、深く苔むしていた。
西側斜面よりも、いつの間にか湿度が高くなっており、苔が、木々の幹や、地面のあちらこちらから突き出し始めた岩の表面を、びっしりと覆っていた。
正午の日差しは完全に遮られて、ランタンを点けたいような薄暗さの中、重く淀んだ空気が鼻腔を塞ぐのか、なんだか息が苦しいようだ。
「石の墓地かぁ…」
タッカーは、不安げに周囲を見回す。
「なにか出そうな雰囲気だよねぇ…
ここ、大丈夫なの?」
「昼は、大丈夫だ」
集めた枯れ枝で火を起こしながら、ヒヨウは平然と言った。
「夜は、通らないことだ」
タッカーは、やや青ざめた。
「ええっ、と。
夜は、どうなってしまうの?」
「この辺りは、夜は山女の住み処となるので、とても恐ろしい目に会うと言うな…。
今は平気だ」
淡々とヒヨウは語った。
山女の恐怖については、嬉々としてチェコがタッカーに教えた。
「凄い足音なんだよ!」
ちさも、
「やま、お、んな、、とても、危険…」
と、口を添える。
そうしている間に、ヒヨウは持参の鍋で米を炊いていた。
チェコが昨日釣った虹カマスの切り身や蛇の干物も、鍋の横で焼かれていた。
タッカーが恐々と森を見回す中、食事が出来上がろうとしていた。