世界大会
「六七年大会は熱かったわよねぇ!
私の世代なら、エンチャント死人の花園で大量アースを引き出して、十秒キルを狙う五五年アーストリー大会も忘れ難いわ!」
キャサリーンも、瞳を輝かせた。
「あー、知ってる知ってる!
死人の花園自体は、使い終わったスペルカードを分解してアースを出す、今でもよく使われているスペルなんだけど、この五五年度で禁止スペルになった二つのカード、
火山弾、と、
スペルボックスの中の召喚カードを、そのまま使用済み認定してしまう、使用済み、
が、ヤバかったんだよねぇ!
使用済み、で全ての召喚獣を使用済みにしたうえで、死人の花園、で出した大量のアースを全てつぎ込んだ、超巨大火山弾を発射し、十秒キルを狙ったアーストリー大会では、ベスト八に出た内の三人が重症、一人が死亡し、
火山弾、と、使用済み、は即禁止スペル入りをしたんだよねぇ!」
「大会で死者…、スペルランカー…、危険」
パトスは呟いた。
「でもパトス。
一回でも世界大会で優勝…、いやベスト八でも入賞したら、何億リンも稼げるうえ、このヴァルタブァ王国でだって有名セレブ入りは間違いなしだぜ。
外国では、ヴィギリス王国のベン・フラッフがナイトの称号を授かたのも、彼が三年間にわたってベスト八に入賞したうえ、彼の名を最高に高めたヴィギリス大会では、ついに優勝を果たしたからだし!
あの無数のスペル無効化スペルを操った心理戦は、ビック・ベンの名を、本当に轟かせたよなぁ~」
チェコは、自分の妄想世界に、自ら踊りながら埋没していった。
「スペルランカーだけではなく、スペル製作者も、一枚、大ヒットスペルを開発したら、富も名声も思うがままよ!」
「ああ…。
例の十秒キルの、使用済み、のスペル開発者は、たった三ヶ月で五百億リンを稼いだんだってねぇ~」
チェコは、妄想の海の波間を、気持ち良さげに漂いながら、答えた。
「実は、私もスペル開発者なのよ。
そして、この子、ハナを狙っているのは、その、使用済み、スペルで大儲けした、ヤバいスペル開発会社、マッドスタッフが差し向けた三人のスペルランカーなの!」