スペルランカー
「西側斜面を、たった半刻で登りきれるとはな。
上出来だぞ、タッカー。
ゆっくり休んでくれ」
ヒヨウは、タッカーの足をマッサージしながら、褒めた。
「上出来はいいけど…。
身体中ボロボロだよ…」
タッカーは、草の上に、着ていたコートを敷いて、うつ伏せに寝転んでいた。
いつの間にか、森の喧騒も収まったようだ。
結局、何がどうしたのかは判らないが、調べに戻るような体力もない。
チェコも、見よう見真似で、タッカーの腕をマッサージする。
「ヘヘヘ…。
頂上へ駆け上がったときの、タッカー兄ちゃんの顔、面白かったなぁ…」
タッカーは泣きべそをかきながら、必死に蔓草を切り、大慌てで木にしがみついて、何とか転落を免れた。
チェコはケラケラ笑うが、ちさはチェコを嗜める。
「チェコ、、一生懸命の、、事を、、、笑っちゃ、、可哀想、、」
タッカーは、いいよいいよ、と、溜め息をつく。
「僕って、子供の頃からそうなのさ…。
一生懸命やっているのに、何か人に笑われちゃうんだ。
でも、そこでカチンときて争う無意味さを、僕はシスターに教わったんだ。
一緒に笑えば、皆と友達になれるんだ、って」
「へー、シスターって、教会の人?」
チェコが聞くとタッカーは笑った。
「僕、学校は、教会系の学校に行ったんだ。
シスターは、とても良くしてくれたよ…。
だから僕は、シスターに恥だけはかかせないよう、スペルランカーを目指しているんだ」
へへっ、とタッカーは笑い、
「シスター、アザヘルは…」
言いながら、タッカーは眠ってしまった。