騒然
チェコたちは足を早めて、山道を登った。
時折、図上から、脳天に響くような獣の叫びが聴こえてくる。
タッカーは、荒い息を漏らしながら、
「お…、襲って来ないかな?」
ドゥーガの鳴き声は、本当に頭の真上から聞こえている。
「襲うつもりならば、無言で急降下してくる。
あれは、警戒の叫びだ」
「だけど、ドゥーガを食べるのはゴロタぐらいでしょ?」
チェコが聞くが、
「いや、豹など木に登れる肉食獣は皆、ドゥーガの敵だ。
あの声が、どんな獣に対してのものか、までは俺にも判らない。
どっちにしろ、出来るだけ急いで西側斜面を抜けないと、いつ、とばっちりを受けるか判らない。
気が立っている動物は攻撃的になるからな」
ヒヨウは、また少し、スピードを上げた。
かなり下の方で、ドゥーガが鋭く鳴いた。
と、同時に、巨大な羽音と、獣の叫びが山の中にこだました。
「戦った?」
チェコの問いに、
「とうかな。
動物たちは、普通、威嚇はしても、本当に戦うことは少ない。
戦いをゲームにするのは人間だけだ」
おおっ! と、チェコはヒヨウの言葉に感銘を受けたようで、
「スペルランカーは、昔の決闘だもんね!」
と盛り上がった。
そんな一行とは別に、森は、騒然となりつつあった。