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叫び
タッカーは本気でコケたようで、慌てて、近くの木にしがみついたが、ヒヨウは、
「上水道のことだろう。
チェコ、半分正解だ」
それって不正解だよね、とタッカーは苦笑する。
「上水道も下水道も、水道には違いない。
上水道は、水道橋という橋を通って地上を通るが、下水道は雨水を流すため、地下を流れるんだ」
チェコは、茫然と呟いた。
「地下を流れる水道!
だから、石を敷いても、崩れないのか!」
タッカーは、やっと最初に戻ったねぇ、と、ほっ、と息をつくが…。
三人ののんびりした会話を、突然、甲高い獣の叫びが遮った。
チェコは、思わず身を低くした。
タッカーは、慌てて傍の木を掴む。
「ち…、近いね…」
チェコは、声を潜ませる。
「ドゥーガが、警戒している。
なにかが、近づいて来るようだ…」
ヒヨウも囁く。
三人は、つづら折りの三分の一程を登っていた。
「ま…、まさか…、ゴロタ?」
タッカーが聞くが、ヒヨウは首を振る。
「正体を確かめるより、早く登ってしまった方がいい。
急ぐぞ!」
ヒヨウは、談笑で緩めていた足を、早めた。