コクライノ
チェコたちは、つづら折りの道を登り始めた。
「そう言えば、この辺、ドゥーガがいる、って言ってなかったっけ」
チェコは疎らな木の間から覗く、深いゴロタの森を不安げに見つめた。
「言ったが、奴らは、昼間に動くことは、あまり無い。
とはいえ、急に襲われることも無いとは言えないから、俺が声を上げたら、伏せてくれ」
「二つ頭、じゃないの?」
チェコが聞いた。
「昼間なら、伏せるだけで充分だ。
奴ら、昼間は目がよく見えないんだ」
言いながら、どんどんと登って行く。
ゴロタの森では、ほぼ下草の上を歩いていたが、西側斜面のつづら折りは、細いながらも手入れのされた道らしく、土の路面だったので歩きやすかった。
「土なだけで、こんなに歩きやすいんだねぇ」
タッカーは、驚きの声を上げた。
「雨さえ降らなけれは、な。
泥は別物だ」
「俺、雨季の畦道で、靴、十個ぐらいなくしてるよ。
その度に、ダリア爺さんに、凄い怒られてさぁ…」
「ふーん、泥って、そんなに大変なの?
コクライノの道は、大体、石敷きだから…」
タッカーの言葉に、チェコは笑う。
「またまたぁ、
いちいち、道に石なんて敷いてたら、雨の度に、石が崩れちゃうじゃない」
タッカーは慌てて、嘘じゃないよ、と言うが、取り合わないチェコに、ヒヨウが残念そうに告げた。
「チェコ、
首都コクライノのあるサンマントルの丘はな、
千年前から、全て石敷きなんだ」