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頭部
もうタッカーの耳にも、その音は届いているようだった。
「あ…、あの!
ガザガザいう音が!」
チェコも、答えて叫び返した。
「虫の足って独特で、細かい毛が一杯生えててさ!
それが木の葉と擦れるんだ!」
ひゃあ!
と、タッカーは走りながら自分の体を、自分の腕で抱えた。
「僕、友達の足の毛でも、毛で一杯、とかダメなんだ!」
「でも、体重は思うより軽いんだって!
リコの村のベンスさんが大蜘蛛に踏まれたんだけど、怪我はしなかった、って!
ただーーー」
タッカーが悲鳴を上げた。
「ただ、何よーー!」
「ただ、後ろの奴が、俺らを餌だと思っちゃったら、困るなー、って!」
チェコの叫びにタッカーも、
「困るよー!」
二人の叫びに、ヒヨウは冷静に回答した。
「まだ、今の陽気では、虫は動きが鈍い。
それほど恐れる必要は…」
だが、チェコの叫びが遮った。
「いや、けっこう速いよー!
ほら、あの木の隙間にーー!」
そこに、数メートルはありそうな、丸みをおびた真っ黒い、巨大な頭部が現れていた。